アニメ・出版業界18団体が「生成AI時代の創作と権利のあり方に関する共同声明」発表

2025年10月31日にKADOKAWAや講談社、小学館などを含むアニメ・出版業界18団体が「生成AI時代の創作と権利のあり方に関する共同声明」発表しました。Open AI社が9月末にローンチした映像生成AI「Sora 2」に対してのもので、著名な作品に酷似した生成物が確認されている現状を受けたものとなっているようです。生成AIと著作権の問題は、生成AIが出た当初から懸念されていた問題で、「Sora 2」が発表されて、改めて業界から声明が上がった形になります。
オプトアウトが原則では権利侵害につながる
「Sora 2」は著作権や肖像権についてオプトアウト方式(※)で運用されており、声明は著作権法の原則に基づくオプトイン方式の徹底と、学習データの透明性確保を求めた内容となっています。
これに対して
権利者の明示的な使用許諾なく、生成 AI がアニメや漫画等の著作物を学習し、特定の作品を再現した映像等の生成・公開が可能なシステムを提供することは、著作権法の「権利者の許諾を得てから利用する」という原則に反する行為です。この原則に基づき、権利者が AI 事業者へオプトアウトを申請するのではなく、AI 事業者が権利者に対してオプトインを申請し使用許諾を得ることの徹底が、いま一度求められます。
との見解で、オプトイン方式の学習段階で権利者絵の許諾の徹底を求める形となっています。
現状では学習には著作者への許諾を得ずに学習すること自体は問題ないという意見もありますが、共同声明ではそれも許諾を得るべきであるということですね。文化庁でも学習用データとして多くの著作物を用いることの課題(膨大な数・個別許諾取得困難)や、著作物を入力する際の「データの複製・公衆送信等」の法的検討についても整理されています。
特に、著作権法第30条の4(「著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用」)が、AIの学習・解析用途において適用され得る権利制限規定として紹介されています。つまり、著作物を“情報解析”目的で用いる場合、著作権者の許諾なく利用可能となる場合があるというものです。
基本的なスタンス
声明のなかで「基本的な考え」という項目で次のような一文があります。
私たちは生成 AI 技術の進展を歓迎し、その可能性を正しく活かすことで、より多くの人々が創作の喜びを分かち合える社会が望ましいと考えています
とあるように、基本的にはAI技術の発展を歓迎しているとのことです。歓迎はしつつも
著作権侵害を容認しないという原則を改めて確認します
としておりAI生成によってできた結果に対しての著作権侵害は容認できないとの見解を示しています。
これは当然の主張であると思いますし、これを認めてしまうと生成AIの信頼性もゆらぐ形になるかと思います。
AIと著作権の問題に関しては、文化庁からも「AIと著作権について」とう令和6年3月に文化審議会 著作権分科会 法制度小委員会においての取りまとめが発表されています。
権利侵害への対応
結局のところ重要なのは次のポイントです。声明の中で次のように書かれています。
生成AIを活用しているか否かを問わず、著作権侵害に対して法的・倫理的観点から適切に行動します。
AI生成か否かにかかわらず、著作権侵害には対応していきますよということです。
AIによる著作権侵害は「創作意図」と「創作的寄与」の両方がある場合に侵害に当たる場合があるとされています。
また、
この姿勢は、生成 AI をはじめとした新しい技術を拒絶するものではなく、創作に携わるすべての人の努力と尊厳を守るための責任であると考えています。
ということであくまで生成AIを否定するのではなくクリエイターや創作者の保護という点に言及されていたようです。
声明参加企業・団体
- 一般社団法人 日本動画協会
- 公益社団法人 日本漫画家協会
- 秋田書店
- 一迅社
- 宙出版
- KADOKAWA
- コアミックス
- 講談社
- 小学館
- 少年画報社
- 新潮社
- スクウェア・エニックス
- 竹書房
- TO ブックス
- 日本文芸社
- 白泉社
- 双葉社
- 芳文社
- リイド社
(出版社名から株式会社を省略
他団体の対応

今回の攻め位より前の、コンテンツ海外流通促進機構(CODA)は10月28日、米OpenAIの動画生成AI「Sora 2」に関し、27日付で同社に要望書を提出したと発表したと報道がありました。今回の要望は、CODAに所属する会員企業からの要請に基づくものということで、以下の2点になります。
1. Sora 2の運用において、CODA会員社のコンテンツを無許諾で学習対象としないこと
2. Sora 2の生成物に関連する著作権侵害についてのCODA会員社からの申立て・相談に真摯に対応すること
このように「Sora 2」に対して対応しているのは日本国内だけではないようです。
生成AIに対する著作権まとめ
ここで生成AIに対する著作権をまとめてみました。
創作意図とは
著作権法における「著作物」とは、
思想または感情を創作的に表現したもの
とされています。
この“思想・感情”を生み出す主体が人間であることが前提です。
AI生成における「創作意図」とは、
人間が何を表現しようとしてAIを活用したのかという明確な意識や目的を指します。
▪ 創作意図が認められる例
- 明確なテーマ(例:「夕暮れの街角に立つ少女の孤独」)をもってAIに指示する
- 構図・スタイル・色調などを意図的に設定する
- 複数案の中から目的に沿って選択する
▪ 創作意図が弱い例
- 「可愛いイラストを生成して」といった曖昧な指示
- AIの自動提案をそのまま採用する
→ 意図の具体性や表現への関与が薄いと判断されやすい。
創作的寄与とは
創作的寄与とは、
AIが生成した結果に対して、人間がどのような独自の表現・編集・判断を加えたかを示す概念です。
著作権法上、AI自体は「創作主体」とは認められません。
したがって、AI出力物に人間がどれだけ創作的な行為を加えたかが、著作物性を判断する基準となります。
▪ 創作的寄与があるとされる例
- 出力結果を選別し、取捨選択や組み合わせを行う
- 加工(色調補正、トリミング、描き込みなど)を通じて独自の表現を加える
- 複数ツールを組み合わせて統一的な作品として構成する
- プロンプトを試行錯誤しながら意図した表現を導く
▪ 創作的寄与が認められにくい例
- AIの自動生成結果をそのまま投稿・販売する
- プロンプトをほとんど工夫せず、偶然的な結果を利用する
文化庁の見解(2024年報告書より)
文化庁の『AIと著作権に関する考え方』では、次のように整理されています。
AIによる生成物が著作物となるためには、
生成過程において人間の創作的関与が認められる必要がある。
つまり、
AIは「道具(ツール)」として扱われ、
その使用を通じて人間の表現意思が作品に反映されているかどうかが判断のポイントです。
実務的な判断ポイント(チェックリスト)
| 観点 | 判断ポイント | 説明 |
|---|---|---|
| 創作意図 | 作品のテーマ・方向性を自ら設定しているか | 明確な目的・構想があるか |
| 制作過程 | 生成や修正に試行錯誤を重ねているか | 単なる自動生成ではなく判断が関与しているか |
| 編集・加工 | 出力を選択・編集・構成しているか | 加工や再構成に独自性があるか |
| 結果 | 出力が制作者の意図と一体化しているか | 人間の個性・表現が感じられるか |
まとめ:AI時代の「著作者性」の考え方
AI時代の創作においては、
- AIが生んだものそのものは「無著作物」
- それをどう使い、どう仕上げたかに人間の創作性が宿る
したがって、
「AIを使って作った」ではなく、「AIを使って自分が作った」
と言える状態にすることが、法的にも創作的にも重要です。
6. 補足:AI生成物の著作権帰属の現状
- 現行法上、AI自身は著作権者になれない。
- したがって、AI生成物を使う際は
- 生成ツールの利用規約(著作権帰属・商用可否)
- 第三者権利(肖像権・商標など)
にも注意が必要です。









